第4話 シカの被害対策 ミツマタの考察


「シカはミツマタを嫌うので被害対策に効果があるあるのではないか…」と言うことを聞いたので、この里で実際に使えるかどうかを試してみることにしました。


ミツマタ

ミツマタは、中国原産の低木で、コウゾ、ミツマタともに古くから紙の原料として用いられてきました。


ミツマタの花

ミツマタの、開花は3〜4月、花色は黄色、耐寒性は普通ですが、耐暑性には強い植物です。落葉性、香りがあり、日蔭でもそだちます。

さっそく、大輪ミツマタ0.6mの苗を購入しました。まずは、ミツマタを知るため、鉢植えとして手もとに置くことにしました。鉢の底にゴロ土を引き、赤玉土(鹿沼土)を6、バーク堆肥4の割合の用土を使用しました。苗は、麻シートを巻いてあるので解かずにそのまま植え込みました。

大輪ミツマタの苗


 シカはミツマタを食べない

シカとミツマタについて調べてみると、おもしろいことが分かりました。
ミツマタの群生地の周囲の笹は食べ尽くされているが、シカ防止柵のないミツマタは食べられていません。シカは、ミツマタを避けるのです。
農林水産省の平成20年度〜26年度の〈農作物の被害がくの推移〉に …シカが好まない「ミツマタ」を栽培し食害防止柵の代わりとすることで、食害対策をする…というようなことがあがっています。

ミツマタがシカ忌避植物として逆手に取るとことは、ずいぶん前から考えられていたようです。



 シカの一般的な被害

野生の動物が食べ物を探し里に出て作物を食い荒らします。
イノシシ、シカはその代表です。特にシカは国内で最も被害が多い動物です。草食動物で多くの種類の植物を食べあさり穀物、野菜などのあらゆる農作物を食害します。田畑のみならず、山野の植物も食べ尽くします。樹木の樹皮を剥ぎとり、樹皮食いで木の形成層を傷つけられた木はやがて枯れてしまいます。
食害のみならず、シカなどに付いたマダニなどの外部寄生虫が人間に付くことも考えられます。


 里の実際のシカの被害状況

 まずは、里でのシカの具体的な被害状況は次のようになります。

 1) 草木の葉(若い柔らかい葉)食べる
茎の先端部分を食いちぎる食べ方をします。
若芽を食いつくされると、野菜は育ちません。
野菜(ピーマン、ナス)の若芽を食い尽くす

 野菜⇒ キュウリ、ナス、ピーマン、唐辛子、カボチャ、大根など植えてみましたが、いずれも、2度食い荒らされるとだめになりました。何とか収穫が出来たのは、大根と唐辛子でした。

 実のなる樹木⇒ 同様に柑橘類の苗を植えても、若芽を食い荒らすので、育ちません。みかん、甘柿と植えてみましたが、全滅でした。


温州ミカンの若芽を食い尽くす
 成木になった柑橘類⇒ ユズなども若葉を食べるので、実がならなくなり、ついには枯れてしまいました。


 2)木の樹皮を食べる
これは、杉の木の樹皮を食いちぎったものです。口の届く部分を食いちぎります。

杉の木の樹皮を食い荒らす
ネットを樹木の周りに巻いて保護しました。現在、杉の木はちゃんと生きています。

杉の木にネットを巻いて保護
同じく、びわの木も頭の届く高さ(約2m)にネットを巻いて保護しています。かなりの被害を受けたので、枯れるのではないかと思っていましたが、ちゃんと実がなりました。

ビワの木にネットを巻いて保護

 3)畑やその通路にフンをする、また、角の生え替わった古い角を畑などに置いていく。


 シカの足跡

シカの足跡
シカとイノシシの足跡は、どちらも長細い蹄の跡が2つづつ付きます。イノシシは後ろに副蹄という小さな跡が付きます。これはシカの足跡です。


イノシシとシカの足跡


 鹿の被害のまとめ

 作物について、唐辛子、大根はシカの被害に強い結果となりました。しかし、野菜作りは現在、休止しています。
収穫できた大根

 樹木について、杉など樹皮の食いちぎりに加えて、被害がひどいのは、実のなる樹木で、ビワの木、柚子の木、若い苗のミカン、甘柿の葉を食い散らします。何故か渋柿の木は数本ありますが、被害がありませんでした。


 作物への対策

 野菜を作っているご近所では、畑を柵で囲っています。網ネットなどではなく、丈夫な木材、金属を使った、高さが2m以上の柵です。これで、シカとイノシシの被害を防いでいます。
 私のような新参者が、これらの経験がなく、樹脂製網ネットなどの簡易的な柵を使ったことが、うまく行かない大きな原因であったと思いました。作物作りをするには、2m以上の柵が必須です。

 まとめ

 ミツマタを使う被害対策について、基本的に動物は食べ物と水を中心に行動することを想定して、まずは、里に出て来ないようにすることを優先にします。ミツマタを植えてみての、シカの反応を見ながら進めて行きたいと思います。